坂元裕二(『anone』第4話、青羽、るい子、舵。蒔田彩珠、小林聡美、阿部サダヲ)とAL(長澤知之と小山田壮平)と宮沢賢治

『anone』第4話まだ見ていない方はご覧にならないようにご注意ください。

御願いします。TVerでご覧ください。2月7日22時前に配信終了です。

anone|民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

 

f:id:hand-maid:20180201161703j:plain

「この坂道はどこまで続くの?」 

 青羽るい子(小林聡美)の願いは大抵叶わない。

 

あの子をなぐさめるひとかけらの光 

るい子をなぐさめるひとかけらの光。それは産まれてこなかった女の子、の、幽霊のようなもの、分身である。

 

汚れた傷を洗い流して

見上げた空に手を伸ばしてみた

これまでの人生、るい子の願いは大抵叶わない。村田兆治に憧れて希望した野球部にも入れず、バンドマンを目指すもメンバーに無理やり望まない妊娠をさせられる。さらに産まれてくるはずの女の子はどうも身体が弱かったらしく産まれてこなかった。*1

仕事は誰よりやった。人の分までやったが女性という理由・レッテルで出世は叶わず男性社員ばかりに追い越され。ひと言言ってやるかと言ってみるも、ようやっと出世はしたが望んだ出世ではなく部下もいない書類管理。

結局、多くの人がそうするように仕事をやめ結婚をした。人生2度目の妊娠もした。

「よかったね、よかったね」と2度*2声をかけ幽霊のような分身は母のもとから消えた。

 

が、ここあとも願いは叶わない。家でも子、姑、夫からも正当な評価は得られず。

ことは起こる。体調が悪くなるも、またも子、姑からは相手にされない。

次のシーンは病院のベッド。枕もとには宮沢賢治銀河鉄道の夜』が置かれる。

 

そこに幽霊が現れる。るい子は、実際にはなかった、もしかするとあったかもしれない幸せ、娘との日々を想像して泣いた。だがこんな残酷な想像はこの世にない。

母の心は半分にちぎれた。(幽霊)

 

ここまでの引用の中で、アンダーラインをつけた引用はALのファーストアルバム『心の中の色紙』の9曲目、

『ハートの破り方』の歌詞の引用です。この曲との親和、共鳴はここからも続きます。

 

綺麗になりたくて もがけばもがくほど
この手も足も 獣臭くて嫌になるんだ いつもそうだよ

 少し前に書いたが青羽るい子はベッドで『銀河鉄道の夜』を読んでいる。
そしてるい子はカムパネルラのように考えたのだろう。「ほんとうの幸(さいわい)の為なら僕は何だって出来るけど、本当の幸せって何だろう」

 

るい子は息子との幸せを望みます。一緒にこの家を出てくれないかな?と。そうじゃないとそっちへ(幽霊の元へ)行ってしまいそうなの。*3

「お母さん、樹(息子)のお母さんで居たいの。お金も稼げるの。」

「どうやって?50でババアが?」

 「わかった。待ってて。お母さんお金を稼いで必ず樹を迎えに来るから」

 

しかしお金を稼ぐための半年間に稼いだお金は「盗んだお金1000万」

ほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならなんだってできる。獣にでも獣臭くなっても。体を百ぺん灼いてもかまなわない。盗んだお金でも。それは母の強さのようでもある。

盗まれた1000万を取りに来たハリカ(広瀬すず)、舵(阿部サダヲ)に対しても「あのね、私お金いるの。意味わかんないでしょ。わかんないと思うけど、いるの。お金いるのよ。だって、ないと証明できないんだもん。なきゃだめなの。ね!」

 

いくら盗んだお金といえども、息子と家を出て愛されるためにはその証明が必要なのだ。

 

が、大抵願いは叶わない。1000万は盗まれてしまっていた。

 

もういいよ お母さん こっちにおいでよ (幽霊)

ボーダーラインのこちら側へ呼ぶ。お母さんを想って。

 

風も嵐も夢も涙も金も痛みも恋も明日も

恥も誇りも聖者も影も愛も轍も たゆたう世でも

あの子をなぐさめるひとかけらの光

 

君が好きなんだ 君が好きなんだ

るい子はカムパネルラのよう。結局は人を助けて自分は死んでしまう。

元の家はその死に場所みたいだ。そこに帰ると切り出す。ある意味、自分の存在の死の場所に。しかし、

 

舵「行かないでください帰らないでください 」

るい子「そんなことは私の勝手…」 

舵「あなたのことが好きなんです!あなたのことが好きだから、帰ってほしくないし、行ってほしくないんです」「誠に身勝手な話ですが」

るい子「誠に身勝手だね」 

 

舵はまるでジョバンニのようだ、そして、カムパネルラのようでもある。

余命宣告をされていることは『anone』視聴者にはわかることだが、舵もまた人を助けて自分は死んでしまうのだ。

第3話ではハリカを幾度も逃がそうとした。「僕はいいから、逃げて」*4

その後、幼馴染を逃がせなかったのは痛恨だろう。だが舵はやることはやったし言うことは言ったので大丈夫だろう。

舵の人生は今まで言いたいことを言えない人生だったのだから。

 

アニメ版の『銀河鉄道の夜』はネコが主人公だ。赤と青の猫が出てくる*5

『anone』の全話にまたがる赤と青。人の中にある赤と青、ジョバンニとカムパネルラが入れ替わり立ち替わり出てくるのだろうか。*6

(青い猫顔の猫のほうがジョバンニ)(赤い猫はカムパネルラ)

f:id:hand-maid:20180201171813j:plain

 

 

るい子は家に戻る、そして離婚を切り出される。

それを予想してたように見えるるい子は「晩御飯を最後に。樹の晩御飯を支度したい」と切り出し、一緒に支度をする。ご飯を食べる。

しかしここでもるい子の願いは大抵叶わない。息子とは支度は一緒に楽しく出来たが晩御飯は食べれなかった。テーブルを一緒に囲えなかった。息子曰く「食べる約束はしてなかったから」*7

 

翼は片方では飛べない

でもそんなの気に病むことではない

青羽るい子にとっての片方の翼、羽、の樹(息子)とは離れ離れになってしまった。

 

「これから大丈夫?」と幽霊に聞かれる「大丈夫かわからないけどもう少し生きてみる」と返す。生きるための光が見えたからだろう。そちらへ向かう。

そして、片方の青い羽は見ようと思えば見えるのだ。

 

-------------------------------------------------------------

このようにALの『ハートの破り方』との共鳴をみせた『anone』第4話。青羽るい子。*8

正直にいうと『ハートの破り方』の解釈自体は自分ではまだうまくできていないのですが、歌詞にここまでリンクしているのに何か書かないわけにはいかないと思い、書いた次第です。「母の心は半分にちぎれた」という言葉の影響が大きかったかな。

『ハートの破り方』は、ALのボーカルの一人、長澤知之のソロ楽曲が大もとになっていて、そこからALというバンドを組み、小山田壮平が持ち前の素晴らしい声、表現力を用いてメインボーカルとして唄う。

7分48秒の壮大な曲です。セカンドアルバムはまだですが、ファーストは下の各サブスクリプションサービスで聴けます。ぜひに。

 

 

 

作中、小説本の『銀河鉄道の夜』が出てきますが、長澤知之さんは、下にリンクしたインタビューで宮沢賢治銀河鉄道の夜』のアニメ版に影響をうけていることをお話ししています。『幸せへの片思い』というソロ楽曲(アルバム『SEVEN』4曲目)についての会話です。

 

ー 「幸せへの片思い」は、人間の一番奥深い「自分」がある気がします。”病院”という細かいディテールは別としても、長澤くんの本音がある気がするけど?

銀河鉄道の夜」をアニメにしたものがあって、 宮沢賢治さんの原作は読んだことないんですが、僕はそのストーリーが大好きなんです。カムパネルラは、本当の幸せの為なら僕は何だって出来るけど、本当の幸せって何だろうとずっと考えていて、その話をジョバンニは右から左に聞き流しているんです。結局カムパネルラは川で溺れそうになった友達を助けて、その代わりに自分が死んでしまうんだけど、それが彼の言う本当の幸せだったのかもしれないという到着点なんですが、例えば人の為に死ぬ、誰かの為に生きるということ。自分以外に尽くすものがあれば素敵な話なのかもしれないんだけど、単純に僕は幸せになりたいということを「幸せへの片思い」では歌いたかったんです。


ー もしかしたら、幸せに対してはずっと片思いなのかもしれないですね。

欲望や生命力、そういうものですね。

 

mfound.jp

 

更に、もうひとつインタビュー記事から。聞き手は宇野維正さん。リンクは下です。

詳しくはリンク先を見てほしいのですが、長澤さんは常に自分を客観視していると話しています。

この客観視、神様からの視点、お天道様、監視カメラのようなものが『anone』第4話における幽霊のようなもの、分身(蒔田彩珠さん)なのだと思います。

そしてそれがひとかけらの光になりえるのだろうと、そう考えます。

 

realsound.jp

 

『ハートの破り方』はALのファーストアルバムの9曲目。

ALはセカンドアルバムを『anone』の放送開始の1週間後、2018年1月17日に発売しています。

それの10曲目『青い泡沫 白い光』という曲は宮沢賢治『やまなし』に影響を受けているような気がしていて、その感想の日記(自分の)はまた下にリンクします。

 

hand-maid.hatenablog.com

 

そして、『anone』第2話後に書いた坂元裕二小山田壮平の共鳴についても書いていました。

もしお暇なら見ていただけると、自分の自己顕示欲が少し満たされます。

 

hand-maid.hatenablog.com

 

最後に。

坂元裕二脚本作品、最新作『anone』とALのアルバム『心の中の色紙』『NOW PLAYING』、宮沢賢治銀河鉄道の夜』、長澤知之andymoriの楽曲がたくさんの人に届くことを願ってやみません。

*1:産むという重大な決断をしている

*2:2回言うということは・・・

*3:andyrmori『オレンジトレイン』「お願い 最後のお願い 聞いて じとりとあるようで消えてしまいそうなボーダーライン」との共鳴もあります。ちなみに『オレンジトレイン』で出てくるワード「人身事故」はいつ恋との共鳴でもあります

*4:2話の記事で書いた田中裕子のように、阿部サダヲがいうと「一緒にいて」にも聞こえる

*5:『anone』にも坂元裕二作品にも猫がよく出てくる、と『青春ゾンビ』というブログに書いてありました。すごいブログです。

*6:ロールパンナちゃん?

*7:樹はお金を稼いで戻ってきてくれることを期待してたのだろうか

*8:るい子が入部届を出したときの苗字が「海野」で『逃げ恥』の作者からかなって思ったけどちがって「うみの」じゃなくて「うんの」で、るい子はうんの「運の悪い子」。学校ではイジられて名前のせいと思っただろうけど頑張って頑張って会社でも、でも。苗字替わっても大抵願いが叶わない。ドラマにないドラマもすごい。更に考えると、幽霊みたいで分身みたいな娘の「私いい子?」の言葉が、運の悪い子との対になっている